『経済の倫理学』山脇直司著(丸善)

 from 山脇直司著『経済の倫理学』をめぐって by 竹中英俊

著者は経済の倫理学の新しいパラダイムを打ち出す。それは、「義務・徳・財=善」という経済を捉える倫理の三つの観点であり、従来の公私二元論に代わる「公・公共・私」の相互作用的な三元論である。前者では、効率主義・効用主義・ベンサム主義と訣別し、経済倫理学を義務論・徳論・財=善論の観点から構築し、正義・基本的権利・責任・ケアという重要な倫理学的概念と関連付ける。後者では、「政府の公」「民の公共」「私的経済」という三元論を導入して、経済を捉える視点を鋭利にし豊かにし、さらにNPONGOの位相を明確化する。
そして、経済倫理学の学問横断的な役割を示すために、「進化する経済社会」の認識と倫理とのかかわりをめぐる争点、「好ましい経済秩序」をめぐる政治哲学・社会哲学的な争点、社会福祉・社会政策をめぐる倫理学的争点を取り上げる。最後に、「人間社会の活性化」のための倫理的思考のあり方、グローバル化時代における経済倫理学の役割と課題を提示する。

【近著】5月8日発売、ちくま新書469『公共哲学とは何か』山脇直司 著 ISBN:448006169X