「正しい読書、異常な読書」 text: 永江朗

from ポプラビーチ http://www.webpoplar.com/beech/

第3回 「本に線を引く」
あるとき、図書館から借りてきた本を読んでいた妻が、「なに、これ。気持ち悪い」といった。どんな気持ち悪いことが書いてあるのかと思ってその本を覗いたら、そうではなかった。本のあちこちに線が引かれている。... どうせ返却しなくちゃいけないのに、なんで線を引くのだろう。不思議だ。...
意味もなく、弱々しい線を、ひょろひょろとあちこちに引くのである。本がいままでとは違った形で見えてくるのではないか。... 傍線を引くと引かれた文字が浮き上がってくる。線を引いた文字が、線を引かれていない文字と分けられ、線を引いた文字とほかの線を引いた文字とが結びつく。著者や編集者が考えてもみなかったような本の見え方になる。