Winny開発者逮捕2 東浩紀さんの意見

from hirokiazuma.com/blogの「Winny開発者逮捕2

朝起きた途端に、今度は下記のようなさらに衝撃的なニュースが目に飛び込みました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040512-00000001-kyodo-soci
これはさすがにひどい。Winnyを使っての違法コピーでも、Winnyの開発ですらなく、配布そのもの、ひいては存在そのものを非合法化しようとしている。これはもはや、個別Winnyの問題ではなく、P2Pの理念そのものへの攻撃だと考えるべきです。... なお、知るひとぞ知るように、47氏は「デジタル証券システム」という新しい著作権システムを提案したことでも知られています。僕はある理由からこのシステムを支える哲学には大きな疑問があるのですが ... それはそれとして、野心的な提案であったことは間違いない。ところが、そのような試みすらも、現状の捜査では
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040511-00000207-yom-soci
と報道されているように、違法性の根拠として使われようとしています。これはただちに言論統制というわけではない。とはいえ、「いまの著作権制度は古い」といった発言を萎縮させる効果があることは間違いない。そして、警察もそれは分かっているはずです。こんなことが許されていいのでしょうか。

Winnyの利用者は100万人以上だと推定されています。つまり、アンダーグラウンドハッカーがどうこう、というものではなく、大衆的なメディアなのです。他方、著作権の被害というのは、傷害事件と異なり明確に算出できるものではありません。Winnyを通してあるアルバムが10万人に流れていたからといって、Winnyがなければその10万人が定価でアルバムを購入したかといえば、決してそうではないからです。むしろ、Winnyは、彼らにそれまで知ることもなかった楽曲に触れる機会を与え、カラオケや着メロに誘導することで全体的には市場を広げていたのかもしれません。これは、いまのところ、だれにも分からないことです。そのような状況で、もし現行の著作権法が100万人もの人間をいつでも犯罪者にすることができるようなものなのであれば、そんなのは法律のほうが間違っているに決まっています。
著作権法は人間が作ったものです。したがって変えることもできます。そもそも、著作権法は、印刷や録音や映画のような新しいテクノロジーが登場するたびに、つぎつぎと形を変えてきたものなのです。僕たちは、いまこそ、現状の著作権制度は古いし、それを支える流通制度も古いし、新しいテクノロジーを用いた大きな変革が必要なのだ、と大きく声を挙げるべきです。

【追記】
僕のGLOCOMでの同僚の石橋啓一郎氏が、Winnyの功績について整理しています。Winnyユーザでなくとも頷けるニュートラルな議論になっていると思いますので、リンクしておきます。参考にしてみてださい。
http://ishbash.blogtribe.org/day-20040510.html