米長邦雄『人間における勝負の研究』ASIN:4396310498

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米長邦雄「人間における勝負の研究」より
「将棋で言うと、最善手ではないけれども、指してもよい手ならOK、すなわちどれにしようか、ということを思い悩まずに指してよい。しかし、悪手を指さないということには、十二分な配慮をする。将棋には最善手とそれに近いものが一つか二つあると、一方で悪手が百くらいあるのが普通ですが、人生も同じようなものではないかと思います。道を歩いていると、あたり一面がほとんど悪手の山で、その中で最善手かどうかは断定できないが、悪手ではなさそうな細い道がある。そして、いかにして悪手の山に踏み込まずに、正しい道を歩んでいけるか。これが、私の言う「許容範囲」ということであり、そういう意味では、人生の生き方と将棋というのはよく似ていると思うわけです。
将棋で最善手を見つけることは、本当に大変なことです。しかし、最善手を見つけることも大切ですが、それよりももっと大切なのは悪手を指さないことです。だから、悪手でない道なら、端でも真ん中でも、どこを歩いてもよいのです。(略)
要するに、悪手の山の中を歩いているようなものが「人生」なのです。