『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ著

辻大介さんの書評
http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_rev.cgi/3e8b00076d3b801066be?aid=&bibid=02453132&volno=0000&revid=0000340684

私のみるところ、日本の社会学界には「社会学」者はいません。いるのは、「非社会学」者か「反社会学」者かのいずれかです。これは個人的な意見ですが、正統な「社会学」とはそもそも「反社会学」であるのではないかと思います。その意味では、この本は「正社会学」の良質な入門書とも言えるでしょう。
また、その点でいえば、本書に不満がまったくないわけではありません。たとえば、第2章では少年犯罪凶悪化(増加)論がバッサリ斬られていますが、切れ味の粗さがやや目立つところもある。土井隆義さん(『〈非行少年〉の消滅』信山社)や広田照幸さん(『教育言説の歴史社会学名古屋大学出版会)といった、「反社会学」者のしごとによって、今ではさらに鋭いメスがあてられつつあります。こういった優れた反社会学者たちのしごとへと入門者を導くリファレンスがついていれば、とも思うのですが、まあ、それは欲ばりすぎというものでしょう。
いずれにせよ、本書によって、反社会学=正社会学への道へと誘われる旅人が1人でも多からんことを願ってやみません。
本音のところ、この本は私が書きたかった。
くやしいぜ。