『やわらかな遺伝子』マット・リドレー著(紀伊國屋書店)

長谷川眞理子氏によるブックレビュー
http://www.kinokuniya.co.jp/05f/d_01/book29/book04_29.html

 最近のゲノム科学のめざましい発展は何を明らかにしたか? それは、ある意味で、以前の遺伝決定論者にも環境決定論者にも水をさした。いろいろな性質を決めるのに関与している遺伝子の存在は、以前は単なる仮定でしかなかった。たとえば、「ある種の行動を決める遺伝子」というものがあると仮定しよう、としてその行動の進化の話をしてきた。それに対しては、そんな架空の遺伝子をもとにした話は信用ができない、という反論があった。しかし、今、本当にそのような遺伝子がどんどん見つかっている。しかも、何番染色体のどこにある、ということまでわかる。たとえば、性格を決めるのに関与している遺伝子も見つかっている。このような具体的な遺伝子のリストを前にしては、もう架空の作り話という批判は通用しない。