週刊読書人 7月30日号「特集=印象に残った本 43人へのアンケート 2004年上半期の収穫から」

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夏季恒例のアンケート特集をお送りします。各分野の気鋭の研究者を中心に、ノンフィクション・ライター、書店員も参加。上半期に出版された人文・社会科学系の本、文学系の本の中から、特に印象に残った本、収穫と思われる本を三冊挙げてもらい、コメントを添えて頂きました。

▼著者が50音順になっていないけど……。
▼平井玄氏は、E・W・サイードパレスチナ問題』(みすず書房)を推薦。曰く、「サイードを「啓蒙の聖人」にしてはつまらない。彼はなぜドゥルーズに惹かれたのか。サイード自身が文学、思想、政治、音楽の壁を突破していくノマド*1だったからだ。分離壁の建設が止まらない今、本書は基底文献としての重みを増す」。

*1:ノマド (nomade 仏)〔哲学・思想〕:「遊牧民」「放浪者」の意で、「定住民」と対立する。元来は、民族学文化人類学で使われる用語であるが、ドゥルーズガタリが、『千のプラトー』のなかで、一定の状況のなかに閉じ込められていない、自由な動きをすることができる人間という意味で使っている。したがって、「ノマド」は「リゾーム」と関連した概念であり、一定の場に動かないで閉じ込もっていず、そこから「リゾーム」状に別の場にある他のものと横断的に連絡し、そこへ移行できる存在のことをいう。また「ノマド」の運動はあらかじめ定められた方向になされるものではなく、意外な方向に向かって、意外なものと交流し、結合する。言葉をかえていうと、「ノマド」の動きはパラノイア(偏執病)的ではなく、スキゾフレニー(分裂病)的である。旅行者・難民・移民というかたちで地球上のあらゆるところで人間が移動する現代に対応する考え方でもあるともいえよう。【現代用語の基礎知識 2001年版】▼ドゥルーズは、「ノマド的思考」という文章のなかで、「ノマドとは必ずしも動き回る人のことではない」と言っている