石原千秋さんの学生時代

『脱文学と超文学』〈21世紀 文学の創造4〉(岩波書店
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4000267043.html

(301ページ、石原千秋氏のnoteより。二十歳のときに読んで印象に残った本を聞かれて)
浪人時代は、失恋をして受験勉強どころではなかった。失恋の痛手から逃れるために、読書に励み、文庫になっている日本文学の名作はだいたいすべて読んだ。それで、受験勉強は最後の十日間だけで済ませた。大学に入ってからは、それまで机の下でこっそり隠れて読んでいた小説を机の上で堂々と読めばそれが「勉強」をしているということになるので、何となく驚いた感じだった。
大学時代は、江藤淳山崎正和にハマッタ。もちろん、文体もまねた。「おそらく〜に違いない」なんて書いては、江藤淳になった気分だった。その後大学院に進んでからは、吉本隆明蓮實重彦の順にハマッタ。もちろん、また文体をまねた。「とても」なんて書いては吉本になった気分で、句読点を省略しては蓮實になった気分。まあ麻疹みたいなものだが、近代文学研究者ではいまだに蓮實の文体で書いているアホが二人いて、哀れな感じがする。
以上、アンケートの答えにもならないけれども、文体をまねしたくならないような書き手は熱心に読むに値しないというのが僕の信念だ。

「蓮實の文体で書いているアホ」って誰だろう。ま、そんなに知りたいわけじゃないですが。山崎正和さんは、最近はダメですねぇ。村上泰亮さんが元気な頃の対談とか論考は良かったんだけどな。