『綿矢りさのしくみ』(Love&Peace 12)

小谷野 敦/渡部 直己/吉本 謙次 著、800円、163p、太田出版、2004 ISBN:4872338782
ずっと前に買っていましたが、ようやく読みました。
章立ては以下のとおり。

第1章 「綿矢りさ」と、同世代の文学少年・少女たち(吉本 謙次)
第2章 徹底吟味『蹴りたい背中』の技術水準(渡部 直己)
第3章 「にな川」の欲情する背中 −『蹴りたい背中』を尋常に読む(小谷野 敦)
付録 綿矢りさキーワード小辞典(吉本 謙次)など

内容としては、id:ykurihara:20040829#1093737216 にもあるとおり、

やっぱり、小谷野敦に「にな川」を軸に『蹴りたい背中』を論評させたのが何といっても素晴らしい。

ですね。資料としてとっておきたい小論だと思われます。
渡部直己氏の章は、物書きの人が読めばいいでしょう(一般読者向けとは思えない)。*1
個人的によかったと思うのは、吉本謙次氏の作家志望の若者へのインタビュー(第1章)。悔しさと羨望が入り交じった回答がなんとも…。でも、こういうインタビューとか対談ってあきない(もちろん、誰でもっていうわけにはいきませんが)。*2
あと、付録の「綿矢りさキーワード小辞典」も吉本謙次氏が書いているんですが、これが笑えます。「綿矢りさと関係ないじゃん!」という項目があったりします(『背中蹴りたい』の項とか)。全国的に有名になった「綿矢カレー」ですが、そのカレー屋は以前「広末カレー」も開発(?)したらしい(なんだ、結局なんでもいいんだ)。バカバカしいけど面白かったのが「人形館」の項。

綿矢りさは中学のとき演劇部で主役を張ったことがある。(…)中学時代の友人の証言によると「かぐや姫の娘が地球人と月の人間のハーフであるためにイジメられて、地球へ転校してくるが、結局は月で頑張るために帰っていく」という奇抜なストーリーで、これまたバカウケだったらしい。

誰かマンガにしてください。
他にも、「綿矢さんの着ている服って『Do! Family*3』かなあ」という貴重な証言あり。楽しめる一冊です。

*1:しかし、『蹴りたい背中』は冒頭とラスト以外での比喩表現(明喩も暗喩も)が安易でげんなりした記憶あり。次作ではぜひ改善してほしい。

*2:どうやら自分は人の話を聞くのが結構好きらしいことを再確認した。

*3:http://www.do-family.co.jp/