青山真治「名前のない日記 Vol.32」 2004年11月

http://boid.pobox.ne.jp/contents/diary/noname/nona032.htm

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そして一年続けたこの日記もここで終わりにしよう、と思う。
僕ももう心配しないことにした。よけいなことはなにもしないことにした。
映画監督という肩書きになじむことはないが、それでもそれだけやっているのが自分には合っていると、先にも書いたがやっと気づいた。
自分の作品以外のことで人前に出たり、なにか書いたりするのももうやめよう。
まして、こうして自分の個人的なことを書く必要も、もはやない。
もちろん、ひとに何かを教えることも僕の仕事ではない。
小説は趣味だから、ある日ちょろっとやるかもしれないけど。
でもそれ以外はもういい。
脚本を書く、資金を集める、ロケハンする、キャストとスタッフを決める、撮影する、編集する、音楽を作る、ダビングする、配給する、宣伝する、上映する。
その間に生活があり、呑んだくれがあり、語らいがあり、遊びがある。
残りの人生はそれらを繰り返していくことにだけ集中しよう。
そう考えると気楽でしかたない。
きっとついに僕もりっぱなダメ人間になれたのだ。バンザイ!
いままで出会った皆さん、ありがとうございました。また会いましょう。
さようなら。お元気で。

外では、冬の始まりを知らせる風が夜のなかを吹き荒れている。