次の10年はどういう時代か(梅田望夫)

梅田望夫さんの2005年4月2日の日記より。
■ [英語で読むITトレンド] 次の10年はどういう時代か
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050402/p1

※下線は引用者

これまでの10年とこれからの10年

さてIT産業、ネット産業においての「次の10年」を考えるために、10年前の1995年と今を比較してみる。

1995年といえばインターネット時代の到来期だが、それから10年経っているということは、もう既に1995年に始まったパラダイムとは違うパラダイムで「次の時代」が実は動き出しているということである。そこが何かを見極めることが大切である。

1995年と今を比べた圧倒的な違いは何か。次の3点に集約されるのではないかと僕はいま考えている。

当たり前のように思われるかもしれないが、奇をてらった新規性では10年がかりの大きな流れを作る要因にはならない。95年のパラダイムは「Windows95とナローバンドつなぎっぱなしのインターネット」という新環境で何ができるかという勝負で、1995年にはヤフー、アマゾン、eBayらが創業された。

それから10年でいちばん変わった第一のポイントは、「ITのコスト構造」の問題である。「3年で4倍」のムーアの法則があらゆる領域で10年続くことの凄さということがなければIT産業がどれほど退屈なものになっているだろうといつも思う。特にこの10年のストレージ分野での価格低下はものすごかったし、その傾向がこれからさらに続いていく。ムーアの法則の恐ろしいところは、10年か15年くらい価格性能比向上が着々と連続的に進んだところで、コンピューティング・アーキテクチャ全体に不連続で破壊的な変化をもたらすところである。そういうことがこれから起こる。

エンタープライズ分野がいちばん遅れて変化するだろうが、SOAとかASPとかそういうことを、この10年何も起こらなかったからといってバカにしてはいけない。

http://b.hatena.ne.jp/umedamochio/?word=Burnham%27s+Beat&cname=

Burnham's BeatというBlogで、10回に分けて「Software's Top 10 2005 Trends」という連載が書かれた。ブックマークに全部クリッピングしておいたので、ここからたどってください。彼が挙げるキーワードの第1位がXML、第2位がOpen Source、第3位がSoftware As A Service、第4位がService Oriented Architectures、第5位がMessage Aware Networking。皆、今日の議論と深く関係している。第5位についてはGenpakuさんの解説も合わせてご参照。

http://d.hatena.ne.jp/Genpaku/20050329/p2


梅田さんは、この10年でいちばん変わったもののひとつとして「ITのコスト構造」を挙げていますが、「IT」と限定するのは見方が狭すぎるでしょう。より正確に言えば、「様々な財のコスト構造」が変わったのです。そのコスト構造の変化をうながしたのは「製造品の成熟」、成熟という言い方があいまいすぎるのであれば「高付加価値化」と言ってもいいでしょう。

さらに、「国際的な財の競争力の変動」も考えられます。具体的には、インドや中国へのアウトソーシング(オフショア開発)が伸びたのは、「人的資源のコスト構造」が変動したためです。

そのほかにもいろいろ考えられます。出生率低下による年齢別就業分布の変化はボディブローのようにきいてくるはずです。

梅田さんが挙げているリンクはたどっていませんが、重要なキーワードとしてあげている「XML」「Open Source(オープンソース)」「Software As A Service」「Service Oriented Architectures」「Message Aware Networking」は、「オープンソース」を除けば「サービスの利用/提供形態の高度化」と言えるのではないでしょうか。たしかにそれはひとつの方向性ではあるけれど、それだけに囚われるのは少々疑問です。まだ考えがまとまっていないので、これ以上はうまく言えないのですが…。


追記オープンソースについてひとつだけ。
オープンソースが問題となるのはIT産業の中の限られた分野(それでもかなり大きいけれど)の話であるということ。全産業あるいは経済社会全体からは、どのように見えるものなのか Watch したいと思う。