身体にもとづいた知識観とその表現形式に関する研究

ネットワーク型仮想世界の創出研究:身体にもとづいた知識観とその表現形式に関する研究
(久保田 晃弘 東京大学 人工物工学研究センター)
http://mgikta.tmit.ac.jp/3hanSeika/%E4%B9%85%E4%BF%9D%E7%94%B0/H8kubota.htm

▼心の中の身体
言語学ジョージ・レイコフと哲学者マーク・ジョンソンは、1980年の著作「Metaphors We Live By(レトリックと人生)」[3]で、新しいメタファー論をベースに、西洋の客観主義神話と主観主義神話をポジティブに批判しつつ、「経験基盤主義(Experientialism)」という視点、あるいは立場を明らかにした。

さらにジョンソンは続く1987年の著作「The Body in the Mind(心の中の身体)」[4]で、これまでの認知科学が軽視してきた「想像力」と「身体」こそが、人間の理解や思考にとって中心的な問題であると宣言した。彼の主張のなかでとりわけ重要なのが「Image Schema(イメージ図式)」である。イメージ図式とは、経験と理解を組織するための、ある種の運動感覚的性格を持つ身体化された共有パターン(ゲシュタルト構造)である。ジョンソンは同じ著作の中で、27の基本的なイメージ図式の一覧表を提示した(彼らの経験主義は、例えば地
理学者イーフー・トゥアンらの問題意識−「人間にとって空間とは何か?」「それはどんな経験なのであろうか?」「また我々は場所にどのような特別の意味を与え、どのようにして空間と場所を組織だてていくのだろうか?」とも呼応している[5]。)。このイメージ図式のより詳細な記述と、そこから想像力によってダイナミックに生まれる知識と意味(設計のことばでいえば機能)こそが本研究のメインターゲットになる。

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そうした意味と身体の関係を、30年以上に渡って、極めて純粋かつ科学的に探求しているのが、NY在住のアーティスト、荒川修作+マドリン・ギンズである。1988年に発表した「意味のメカニズム」[6]には、荒川+マドリンのウィトゲンシュタイン以後の言語分析哲学を引き受けながら、「意味のことを突き詰めていったら身体に到達した」プロセスが克明にドキュメントされている。

▼参考文献
[1] OMG's Home Page, http://www.omg.org/
[2] Java(TM) Distributed Systems, http://chatsubo.javasoft.com/current/
[3] G. レイコフ・M. ジョンソン,レトリックと人生,渡部昇一他訳,大修館書店,1986.
[4] M. ジョンソン,心の中の身体,菅野盾樹他訳,紀伊國屋書店,1991.
[5] Y. トゥアン,空間の経験−身体から都市へ,山本浩訳,ちくま学芸文庫,1993.
[6] 荒川修作・M. ギンズ,意味のメカニズム,リブロポート,1988.
[7] 荒川修作・M. ギンズ,建築−宿命反転の場,水声社,1995.
[8] A. Kubota,Abduction Machine Project,Creativity & Cognition 1996,Loughborough,U.K.,1996.