沼上幹『行為の経営学―経営学における意図せざる結果の探究』
- 作者: 沼上幹
- 出版社/メーカー: 白桃書房
- 発売日: 2000/03/01
- メディア: 単行本
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●沼上『行為の経営学』 id:contractio:20051101
いずれにしてもこの議論は、大枠で、──以前 ダッハーマ氏に教えていただいた*──クルーグマンのエッセイ「経済学者は進化理論家から何を学べるだろうか」の構図にすっぽりと嵌っているように思う(「被覆モデル的・変数モデル的」のほうが通常の均衡論的議論に、「メカニズム的・行為論的」が「進化経済学的」のほうに、それぞれ相当する)。
そして──予想するに──、これ以降の著作のストーリーは、この図式から一歩も出ずに
経営学の主流は「変数-被覆法則-モデル」だが、経営学には「行為-メカニズム-モデル」も必要であり(!)、
実際に、経営学者は「無自覚に」どちらも使っているが、
方法論的に「自覚的に」、双方を相補的に用いることが必要だ
という主要主張のもとで、その「自覚的に」の部分を明示化するのがこの著作の課題だ、ということになるっぽい。(が、だとしたら先を読むのはかなりキツいなぁ。この予想ができるだけ裏切られることを期待したいところ。)
●OutLogic - 視点 リサーチ- 予測とプランニング - 自らも未来を形成する
http://www.outlogic.co.jp/modules/news/article.php?storyid=219
シナリオ・プランニングが、単なる予測の手段ではなく、未来を捉えるメンタルモデルを拡張して、将来に向けた具体的な行動を促進する手段であるとするならば、確かに「自社」という主体が未来に及ぼす影響というものを勘案する必要が出てくるでしょう。実はこの点については、(非常に難解なので気軽にはオススメはできないのですが)沼上幹教授の以下の本が決定的に重要だと思います。
■『行為の経営学―経営学における意図せざる結果の探究』本書は、社会科学におけるマクロとミクロ、また長期と短期の間に見られる異なる見解、事例研究の擁護、経営の実践家との間の互いに意義深い対話の土俵といった問題群を、"行為のシステム"という実在に関する仮定を置き、"意図せざる結果"を探究し、実践家との間で反省的な対話のプロセスを活発化していくという、ひとつの方法論的立場の設定によって解決したものである。
外部環境を自分と切り離されたものと捉えている限りにおいては、本当の意味で「システム」ということが理解できないのかもしれませんね。自らもシステムに組み込まれているからこそ、また、それをよくよく認識したアプローチを編み出してこそ、真の実践的な方法論というものが出てくるのかもしれません。(この辺は今後の探求課題の1つです)
▼「自らもシステムに組み込まれている」。このあたりは、ベルタランフィ『一般システム理論』に通じるものがあるかも。
- 作者: L.フォン・ベルタランフィ,長野敬,太田邦昌
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1973/07/11
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●OutLogic - 視点 リサーチ- リデル・ハートの「間接アプローチ戦略」 - DHBR 2005.4
http://www.outlogic.co.jp/modules/news/article.php?storyid=210
私が「間接アプローチ戦略」を知ったのは、沼上幹教授による極めて難解な経営書、『行為の経営学―経営学における意図せざる結果の探究』を読んでからです。
難解ではあっても、そもそも経営学とは何ぞや?という本質を突きつけられてくるような魅惑的な本です。この中で、企業戦略にとっての「間接アプローチ」というのが最後の方で少し紹介されています。
(追記)
contractioさんが『行為の経営学』を読み進めています。
id:contractio:20051101#1130794686
四章では、「社会科学においては法則定立は不可能だ」というのを そうとう一生懸命示そうとしている。で、そこでは、「被覆法則」モデルも「メカニズム・モデル」双方ともに、「そこで示される規則性は、法則ではない」(大意)ともいわれている。
(中略)
すると、次に出てくる主張は、「マクロ変数間の規則性についてちゃんと考えるには、その背後にある行為プロセスや相互行為(?)などのメカニズムをみなけれだめだ」ということなのか。‥‥そう主張しているようにも読める。
このあたりの記述は、『もう一つの社会心理学』(ナカニシヤ出版)とも通じるように思われます。
●『もう一つの社会心理学』Kenneth J. Gergen著、ナカニシヤ出版 ISBN:4888484023
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4888484023/
本書でのテーゼに「あらゆる行為には、同定するのに複数の仕方があり、それらの間の優先順位は決定できない」(同書82ページ)というのがあり、ここでの「あらゆる行為」を「あらゆる理論」と読み替えてみると沼上氏の主張と一致するかもしれません。
参考文献にガーゲンがあるかどうかはわかりませんが。。。