内向きの論理を捨てきれない日本の企業システム(沼上 幹)

沼上氏が連載を持っていたのを気がつきませんでした。しかも最終回…。きっと本になるとは思いますが。

「プレジデント」連載記事:ビジネススクール流知的武装講座
(「プレジデント」2006.1.16号 12月26日発売)
内向きの論理を捨てきれない日本の企業システム(沼上 幹)
http://www.president.co.jp/pre/20060116/003.html

腐敗したシステムの下では、社会全体にとっては失敗であるものを「成功」として扱ってしまう。社会から手痛い仕打ちを受けないかぎり、回復軌道に戻すことは難しい。そうなる前に対処すべき二つの予防策を、筆者は提案する。

「血と汗と涙」により神話化される「失敗」
 人は実践を通じて学ぶ。とりわけ実生活の中で修羅場をくぐり抜け、自分自身で血と汗と涙を流した経験の価値は計り知れない。生涯にわたって、その経験を振り返り、反省的思考を注ぎ、深掘りを繰り返していくことで、その経験は自分の人格そのものにまで昇華していくに違いない。

 まず初めに注意しておかなければならない点は、人は失敗経験や挫折経験が自分の人生にとって非常に重要であったと過剰に思いこみ、それによって学習内容を歪めてしまう可能性があるという点である。誰でも、流した「血と汗と涙」の分量が多いほど、その「血と汗と涙」が無駄だったとは思いたくない。(…)失敗経験は、すでに大量の「血と汗と涙」を支払ってしまったのに、周囲の誰からもほめてもらえない。何の役にも立たない苦労という現実を人間はそう簡単に受け容れられない。自分が支払ったコストが大きいのに、周囲から客観的に得られた報酬が少ないと、その失敗経験の苦労から何らかの効能が得られたという神話を創造したくなる

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