競争力を獲得する「知識経営」をITで実現する(紺野登×田中茂)

特別対談:企業力が確実に向上する社内向け情報流通・活用法(番外編)
競争力を獲得する「知識経営」をITで実現する

多摩大学大学院教授 紺野 登氏/NTTデータ ITマネジメント室 田中 茂氏
http://www.ric.co.jp/sol/contents/sol_0602/taidan_0602.html


リード文 ■ 企業の競争力の源泉である「知識」を創出するには個々人が持つアイディアを表出する知識創造プロセスが必要だ。企業文化や特徴に合わせ、知識創造プロセスを実現する「場」、これをデザインするのが知識デザインの役目となる。知識デザインの第一人者である多摩大学大学院教授の紺野登氏と、本連載の著者であるNTTデータの田中茂氏が知識経営について熱く語る


知識の形成を支援する「知識デザイン」

紺野 そこに出てくるのが「知識デザイン」です。「知識をどのように形にしていくのか」というのが知識デザインの本質であり、そのためのITは何か、という問いこそが重要になります。
 たとえば、ある金型製造業では、熟練工のノウハウの一部をブレイクダウンし、マニュアルという形式知に落とし込んで、アルバイトの学生でも熟練工と同じ金型設計をできるようにしました。このように、知を共有し、その知から価値を生み出すのが、私が提唱する知識デザインの姿です。
 デルにしてもアップルにしても、単にモノを製造するだけではなく、そこに「プロユーザー向けに、安く速く製品を提供する」とか「音楽をライフスタイルに取り込む」などの付加価値を付けています。そこには価値を生み出す知識創造プロセスがあり、知を形にする優れた知識デザインがあるのです。
田中 ということは、企業で知識をデザインする「知識デザイナー」は、必ずしもIT部門ではないですね。私は組織の全員が知識デザイナーになれるとは思っておらず、そこには知を持つ人やデザインする人、コーディネートする人など、さまざまな役割が関与すると思っています。
 たとえば、オープンソースのコミュニティでは、すべてが開発者ではなく、「利用者」側に立って意見をフィードバックする人も存在します。このように、知識を形成するには、組織の中で個々人が果たす役割があるのではないでしょうか。
紺野 そうですね、IT部門は資産を分配するファシリテーターに当たります。既存の資産をいかに活用するかを考える役割です。考えてみると、SOA(Service Oriented Architecture)の概念とも近いですね。用途に合わせ、どんどん変えていく。そこで、知識創造プロセスを実現する新しい要素技術を取り入れていくことが必要なのでしょう。

▼田中氏の話をもう少し聞きたいところ。