擬音:ding-dong、fizzなど
明治図書メルマガ 2006年2月前期号 より。
Vol.14 この音、なんの音? ────────────────────────────── ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ding-dong(ディンドン) fizz(フィズ) clink(クリンク) tap(タップ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ さて、これは英語の擬音と呼ばれているもの。何の音だか想像し ていただきたい。 以前に動物の鳴き声について書いた。その稿で同じ鳴き声である にもかかわらず、欧米や日本では聞こえ方が違うのか、表現される 言葉が違うことを述べた。同じことがこの擬音の世界にもある。 冒頭の例はその物が何かにあたって出る音や、その物に何かをあ てたりして出る音の例を示した。 擬音はもちろん物と物があたって出る音というカテゴリーだけで はない。言うなれば動物の鳴き声も擬音の一種である。 また、人間の動作などを表す言い方も擬音としてあげられる。 「ぶるぶる震えるほどの寒さ」とか「ぺちゃくちゃとおしゃべりす る」とか「心臓がどきどきする」などの表現だ。 英語にもこれにあたる擬音がある。すなわち「ぶるぶる」は brrr、「ぺちゃくちゃ」は chatter、「どきどき」は pit-a-pat である。brrr はご覧のように「ブルルル」と発音する。寒さなど で震えている様子は英語でも同じらしい。chatter は「チャタァ」。 べらべらおしゃべりするということだが、ネットの「チャット」は 日本でもおなじみで、同じ形成語である。pit-a-pat は「ピッタパァッ ト」。「どきどきする」のほかに「パラパラ、パタパタ」などの擬 音としても使われる。すなわち、あられなどが屋根を打つ音の「パ ラパラ」である。心臓の鼓動を表すにはやはり「どきどき」の方が 雰囲気を表している。「胸キュン」(もう古いか?)なども、私は 恋する感情を非常によく言い当てたものだなと感心している。 ちなみにB級ホラー映画のことを「スプラッター・ムービー」と 呼んでいる。「ゾンビ」や「13日の金曜日」など、おなじみの恐怖 映画だ。splatter (スプラッター)も擬音で、「(水などを)ば ちゃばちゃさせる音」である。映画をご覧になった方ならお分かり だろうが、必ず血のシーンが出てくる。文字通り「血しぶき」の世 界なのである。これは全くの余談。 さて、こうして見ていくと英語と日本語の文化性の相違がよくわ かってくる。まず、音を耳で聞き、それを言語で表現するという作 業は万国共通だが、使用される言語によって表し方が異なるという ことだ。だが、これは言語の相違というだけでなく、どうも歴史や 風習に裏打ちされた文化的な側面もあるだろう。 ところで、私は日本のマンガが擬音の宝庫だと考える1人である。 これほどまでに擬音を発達させた手段はほかにないのではないか。 小説と比べたりすると物議をかもすかもしれないが、ビジュアルを マテリアルとした創作物が、ともすると文章の組み立てをマテリア ルとした創作物を「超える」一瞬を垣間見るような気がする。昔、 『カムイ伝』(白土三平作)を読んだが、登場人物のセリフが少な い場面が多く、それこそマンガのコマ割進行で動きが連続するとい う一種独特の面白さがあった。 さて、冒頭で紹介した音である。 ding-dong は鐘のなる音。日本で鐘と言うと、やはりお寺の鐘を 連想するが、これは「ゴーン」と表現される。英語ではやはり教会 の鐘であろう。ここらあたりも文化の違いである。ちなみに「ジン グルベル」の jingle(ジングル)も擬音である。「りんりん」と か「ちりんちりん」とかいう音だ。fizz は「シュー」という音。 お湯が沸騰する音もこれだ。炭酸が泡立つのにも使われる。「ジン フィズ」という飲み物はここからきているようだ。clink は「ちり ん」とか「かちん」で表される金属と金属がぶつかりあう音。乾杯 してグラスをあわせるときの音もこれが使われる。tap は「コツコ ツ」とか「トントン」の音。手や足で床などを叩いて出す音である。 「タップダンス」は足で「コツコツ」させて音を出すダンスという ところだろう。 活動としては、まず教える側が物や道具を使って音を出してみる。 その音の表現を日本語で子どもたちに言わせてみる。ALTがいれ ば同じ音が英語ではどう言うのかをたずねてみる。子どもたちは意 外な音の表現に驚くであろう。これを何例も紹介してみてから、最 初の4つ例で紹介したような説明を加えてみると興味が高まる。 次回は、英語に関するミニ知識集。 SHONO-TOSHIO 和名(生野 利夫) 牡羊座のA型。世の中が反戦運動盛んな60〜70年代、ピースマーク に目もくれず、ひたすら不健康なロックやジャズに傾倒、自らも不 健康に陥る。最高なのはレッドツェッペリンのジミーペイジ、でも 本当に好きなのは情念のギタリストサンタナ。