女性の高い自己破産率 −その原因と対処法−

「女性の高い自己破産率 −その原因と対処法−」青山佳代(早稲田大学 商学部5年)
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消費者金融サービス懸賞論文サイト http://www.ibi-japan.co.jp/acfs/kensho/prize_5.html

I.はじめに

 昨今、テレビコマーシャルなどで、スタッフ全員が女性という特徴を持つ、女性専用の消費者金融が増加している。同時に、90 年代後半から顕著に増加し始めた個人の自己破産申し立て件数は、2002年にはついに20万件を超え、2003年には24万件を記録した。

 樋口・坂野によれば、非破産顧客では男性が74.4%、女性が25.6%であるのに対し、破産顧客では男性が59.6%、女性が40.4%という比率になっており、男女の比率でみると、破産顧客の方が女性の占める割合が大きいことが判っている。
 何故、女性の自己破産率が高いのであろうか。男性と女性は違う。具体的には、社会環境・家庭環境だけではなく、価値観やストレスの対処法まで、男性とは異なる。これらのことから、男性と女性が自己破産に陥る原因も違うと予想される。

 そもそも、自己破産とは、収入に対する消費の割合が高い場合に、借金が発生し、その借金を返すために、また借金をするという自転車操業の結果、起こるものである。このことから、自己破産率が上がる原因が二つ考えられる。一つは、消費の割合が一定でも、収入が下がれば自己破産率が上がること。もう一つは、収入が一定でも消費の割合が上がれば、自己破産率は上がることである。

 Credit Research Center (1982a, 1982b) の研究によれば、もともと収入に対する負債の割合が高い層ほど、減収や離婚といった突発的な要因で破産する割合が高いことが指摘されている。また、樋口・坂野によれば、「1. 新規時における与信者による無理な貸付け、2. 貸付実行後における与信者による追加的貸付け、3. 貸付実行後におけるライフイベントの発生という三つの観点に据えて自己破産の原因を分析した結果、自己破産の発生を説明する要因の中で最も発生原因を説明しうるのは、『減収』というライフイベントである」ことを指摘している。

 これらのことから考えると、女性は、「減収」というライフイベントが起こりやすい結果、自己破産率が高くなるのではないか。また、一般的に女性のほうが消費の割合が高いと言われているが、収入以上の消費をしてしまうメカニズムが、女性特有のものとしてあげられるのではないか。

 本稿では、二章では、なぜ女性の自己破産率が高いのかを考察していく。一節では、これを社会的側面から考察し、二節では、心理的側面から分析する。三章では、女性の自己破産率が高い原因を理解した上で、自己破産率を下げる対処法を提案していく。四章では、今回の研究を通しての私見を述べ、むすびとしたい。