『英語教育』2006年5月号(大修館書店)特集:英語力と国語力をともに育てるためには

●英語教育の明日はどっちだ!TMRowing at best id:tmrowing:20060415

『英語教育』5月号(大修館書店)の特集は、「英語力と国語力をともに育てるためには」。

特集への率直な感想は、英語教育側は自分の守備範囲を出て模索しているのだろうか、ということ。自分の居心地の良い立ち位置に国語教育を引き寄せようとしているだけなのではないかという思いが強い。

冒頭の対談は豪華な顔ぶれだが、言語教育放談で終わっている。(中略)

教育関係に限らず、P.24で示されているような、国語と英語の図式(ベン図)を用いて具体的なイメージを語る人が多いのだが、ベン図は集合論であり、概念モデルとしては極めてmisleadingなものであることが十分認識されていない。(中略)

「学校ぐるみの『言語技術』授業」(pp.25-27)にも同様のナイーブさを感じる。この原稿を、国語科の教員が書いていれば、たぶん違った印象になったのではないかと思う。ここで示されている「言語技術」は、三森ゆりか氏が所長を務める「つくば言語技術研究所」の指導助言に基づいたシラバスらしいのだが、このシラバス自体がそもそも西欧的な言語観に支えられていまいか。対話・討論中心で、4技能を有機的に関連づけた指導で実際にどのような「語彙」「文章」を産出できるようになったのかが全くわからないので評価できない。(中略)

今号では江利川春雄氏の「英語教育時評」の内容こそ特集する価値がある。

『英語教育』2006年5月号 目次 >> http://thistle.est.co.jp/tsk/detail.asp?sku=70605&page=1
以下、目次(一部)

<座談会>英語教育は国語教育と連携できるか:その基盤を探る
 (大津由紀雄、三森ゆりか、松本 茂、山田雄一郎)
国語科と連携した英語授業:帝塚山高校の実践から(米崎 里、楳田美惠子)
学校ぐるみの「言語技術」授業:麗澤中学・高等学校の実践(竹政幸雄)
日本語に活きる英語活動:岩倉南小学校の実践から(村上昌子)
ダイアローグ原理の教育へ:転換を迫られる国語教育(村松賢一)
英語も国語も、「言語教育特区」の試み:沼津市立の全小・中学校で(白畑知彦)

■英語教育時評 コミュニケーション重視と学力低下(江利川春雄)