『心理学総合事典』

『心理学総合事典』海保博之・楠見孝 監修/佐藤達哉・岡市廣成・遠藤利彦・大渕憲一・小川俊樹 編、朝倉書店、B5/784ページ/2006年06月20日 定価29,400円(税込)■ もう2刷だそうです。[2006-10-21

心理学総合事典

心理学総合事典

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内容:心理学全般を体系的に構成した事典。心理学全体を参照枠とした各領域の位置づけを可能とする。基本事項を網羅し,最新の研究成果や隣接領域の展開も盛り込む。索引の充実により「辞典」としての役割も高めた。研究者,図書館必備の事典〔内容〕1部:心の研究史と方法論/2部:心の脳生理学的基礎と生物学的基礎/3部:心の知的機能/4部:心の情意機能/5部:心の社会的機能/6部:心の病態と臨床/7部:心理学の拡大/8部:心の哲学

from 朝倉心理学総合事典(仮) http://ameblo.jp/hkaiho/entry-10008680216.html

7部 心理学の拡大 章扉 280字 
心理学に限らないが、学問研究には、その内部から知的好奇心のおもむくままに研究領域を拡大していこうとする力が存在する。さらに、その拡大を勢いづけるのは、社会からの期待である。心理学が、今、その研究領域をどんどん拡大しているのは、内部からの力もさることながら、外部からの期待によるところが大きい。7部に収録した11の章は、それぞれ多彩な領域の最先端研究の紹介になっているが、今後への拡大・展開が大いに期待されるものばかりである。

8部  章扉 280字
心が科学の対象になってまだ1世紀余であるが、それよりもずっと古くから心は哲学の研究対象であった。心が科学の対象となった今世紀、とりわけ、知的人工物と呼ばれることもあるコンピュータが出現した20世紀後半には、百花繚乱のごとく、心についての哲学が隆盛を極め現在に至っている。心についての根元的な問を投げかけ、時には心の研究者に強烈な刺激を与え、時には心の科学に内在するドグマをえぐり出してはそれを批判したり、時には迷路に入り込んでしまった心の科学の道案内をしたりと、心の哲学者はこの半世紀は特に忙しかった。


●朝倉書店「心理学総合事典」刊行(認知的体験 : 海保博之)http://ameblo.jp/hkaiho/entry-10013234763.html

本書の最大の特徴は、心理学の体系に沿って全体を構成するようにしたところにある。本邦唯一の本格的かつ包括的な心理学事典になっていると確信している。

心理学の変貌
パラダイム・シフトと呼ぶにふさわしい、心理学の潮流の最大の変化は、20世紀の前半の行動主義から後半の認知主義への変化であった。これによって、心理学は、文字通り「心」の科学としての地位を確固たるものにしたのみならず、その研究領域を「行動も心も」へと一気に拡大させた。
それはさらに、心の科学をドグマから解放する潮流の変化でもあった。自然科学の堅い方法論の呪縛から解き放たれて、社会学や哲学のような人文科学の柔らかな方法論も受け入れるようになってきた。行動主義の時代には徹底的に排除されていた精神分析もしぶとく復活し、心についての広範な問題に時折鋭い問を投げかけてきた。
そうした潮流の変化と、最近の周辺科学および社会からの心理学への強い期待とは無関係ではない。かつては自ら抑制していたさまざまな心にまつわる諸問題への積極的な研究上の取り組み、そして、その成果を踏まえた社会とのかかわりが活発になってきた。

執筆者一覧
【監修者】海保博之、楠見孝
【編集委員佐藤達哉、岡市廣成、遠藤利彦、大渕憲一、小川俊樹
【執筆者(*は章編集担当.執筆順)】佐藤達哉、渡邊芳之、海保博之*、岡田努、板倉昭二、足立浩平、能智正博、
杉岡幸三、岡市廣成、藤田和生、磯博行、行場次朗*、中島祥好、宮岡徹、斉藤幸子、和田裕一、岩崎祥一、高橋雅延、
鈴木宏昭*、服部雅史、岩男卓実、山岸侯彦、三輪和久、都築誉史*、坂本勉、外山紀子、浅川伸一、荻野美佐子、
遠藤利彦、上淵寿*、大芦治、長沼君主、大家まゆみ、菅原健介、戸田弘二、菅原ますみ、久保ゆかり*、佐久間路子、
坂上裕子、伊藤忠弘、平林秀美、池上知子、大渕憲一*、山口裕幸、伊藤裕子、土肥伊都子、唐澤眞弓、本郷一夫、
須田治、津田彰、岡村尚昌、倉光修、丹野義彦、永井撤、佐々木淳、八尋華那雄、小川俊樹*、清水貴裕、藤田宗和、
一丸籐太郎、中村博文、石井宏典、坂上貴之、竹村和久、坂元章、三浦佳世、蓮花一己、黒沢香、吉川肇子、羽生和紀、
下仲順子、亀口憲治、服部環、信原幸広、福島真人松原仁佐々木正人、矢守克也

目次:
I 心の研究史と方法論
1章 心理学の歴史
 1.1 心理学史の方法論と資料保存の重要性
 1.2 西洋の心理学史
 1.3 日本の心理学史
2章 心理学の方法論
 2.1 方法とは何か
 2.2 方法の役割
 2.3 心理学の方法論的独自性
 2.4 観察・実験・調査
 2.5 臨床心理学の問題
 2.6 質的方法の再評価
3章 心理学の技法
 3.1 実験法
 3.2 調査法
 3.3 観察法
 3.4 心理データ解析
 3.5 質的方法

II 心の脳生理学的・生物学的基礎
4章 脳の神経情報
 4.1 神経細胞の構造と機能
 4.2 中枢神経系および神経細胞の発生と発達
 4.3 脊髄の構造と機能
 4.4 脳幹(延髄・橋・中脳)の構造と機能
 4.5 小脳の構造と機能
 4.6 間脳の構造と機能
 4.7 終脳の構造と機能
 4.8 末梢神経系の分類とその機能
5章 学習と記憶の生理心理学
 5.1 脳機能の局在論と全体論
 5.2 慣れと鋭敏化とシナプスの可塑性
 5.3 古典的条件づけの神経機構
 5.4 道具的条件づけの神経機構
 5.5 空間記憶の神経機構
 5.6 長期増強と記憶
 5.7 ヒトとサルにおける脳損傷と記憶障害
6章 比較認知
 6.1 比較認知研究の視点
 6.2 比較認知研究の手法
 6.3 基礎的過程
 6.4 物理的知性
 6.5 社会的知性
 6.6 意識的過程
 6.7 認知の進化
7章 学習行動
 7.1 なぜ行動が研究対象なのか
 7.2 生得的行動と慣れ
 7.3 古典的条件づけ
 7.4 連合に関する理論
 7.5 オペラント条件づけ
 7.6 オペラント条件づけの基本原理
 7.7 負の強化をめぐって
 7.8 観察学習
 7.9 運動学習
 
III 心の知的機能
8章 知覚
 8.1 視覚
 8.2 聴覚
 8.3 皮膚感覚
 8.4 味覚・嗅覚
 8.5 マルチモーダル知覚
 8.6 注意
9章 記憶
 9.1 記憶の3つの段階と記憶システムの枠組み
 9.2 短期記憶と作動記憶
 9.3 長期記憶
 9.4 潜在記憶
 9.5 記憶の内的判断プロセス
 9.6 記憶の発達と加齢
 9.7 日常生活の記憶の変容とダイナミクス
10章 思考
はじめに
 10.1 演繹
 10.2 帰納
 10.3 問題解決
 10.4 意思決定
 10.5 知識の転移と獲得
 10.6 思考と外的資源
11章 言語
 11.1 知識と言語理解
 11.2 言語処理と統語解析
 11.3 言語獲得
 11.4 言語の病理・障害
12章 知的機能の発達的変化
 12.1 知的機能の発達
 12.2 認知発達の過程
 12.3 認知発達の個人差
 
IV 心の情意機能
13章 感情
 13.1 プロローグ:感情観の変遷
 13.2 感情とは何か?
 13.3 情動の機能を探る
 13.4 情動の生起メカニズムを探る
 13.5 進化から見る情動,文化から見る情動
14章 動機づけ
 14.1 原因帰属,随伴性の認知
 14.2 自己決定性,関係性,有能性
 14.3 達成目標
 14.4 自己制御学習
 14.5 社会性と環境の適合
 14.6 社会文化的アプローチ
15章 パーソナリティ
 15.1 パーソナリティの理論
 15.2 パーソナリティの測定
 15.3 パーソナリティの発達
16章 情意機能の発達的変化
 16.1 「心」の理解と自己の発達
 16.2 関係性とアタッチメント(愛着)の発達
 16.3 動機づけの発達
 16.4 情動と情動的コンピテンスの発達
 16.5 情意機能の発達における社会化の役割
 
V 心の社会的機能
17章 社会的認知と行動
 17.1 社会的認知
 17.2 対人行動
 17.3 社会集団
18章 ジェンダーの心理学
 ジェンダーとは
 18.1 ジェンダーの発達
 18.2 ジェンダーステレオタイプ
19章 心と文化――文化心理学的視点からの検討
 19.1 文化心理学とは
 19.2 文化心理学の考え方
 19.3 実証的研究:文化心理学の方法
 19.4 文化心理学のこれから
20章 社会的行動の発達的変化
 20.1 社会的行動の発達とは何か
 20.2 家族の中における社会的行動の発達
 20.3 社会化のエイジェントとしての仲間
 20.4 集団の中での社会的行動の発達
 20.5 社会的行動の発達を支える諸要因

VI 心の病態と臨床
21章 ストレス
 21.1 健康とストレス
 21.2 学校適応とストレス
22章 病態心理
 22.1 病態心理の諸相
 22.2 人格障害の諸相 
23章 心理臨床
 23.1 心理臨床における理解
 23.2 心理臨床における援助
 23.3 変性意識をめぐって:催眠療法・イメージ療法・動作法
24章 社会と心の病態
 24.1 犯罪と非行
 24.2 心的トラウマ
 24.3 文化適応
 
VII 心理学の拡大
25章 経済心理学
 25.1 心理学と経済学:経済心理学の広がり
 25.2 行動経済学行動分析学
26章 消費者心理学
 26.1 消費者心理学とは何か
 26.2 消費者心理学は何の役に立つのか
 26.3 消費者心理学の研究パラダイムと理論的枠組
27章 メディア心理学
 27.1 メディア心理学の対象と方法
 27.2 メディア心理学の現在と課題
28章 感性心理学
 28.1 感性の学
 28.2 感性心理学の源流
 28.3 感性の定義
29章 交通心理学
 29.1 交通心理学の目的と方法
 29.2 交通心理学の新たな展開
30章 法と心理学
 30.1 法と心理学およびその近接領域
 30.2 責任論,事実認定論,心証形成論
 30.3 裁判の心理学
 30.4 捜査心理学
 30.5 刑罰の心理学
31章 リスク心理学
 31.1 リスク心理学の登場
 31.2 リスク認知
 31.3 リスクにかかわる意思決定
 31.4 リスク・コミュニケーション
32章 環境心理学
 32.1 環境心理学とは何か
 32.2 環境認知
 32.3 環境の評価
 32.4 その他のテーマ
33章 老年心理学
 33.1 老化の概念と老年期
 33.2 正常老化として衰える機能
 33.3 高齢期の記憶
 33.4 高齢期の知能
 33.5 高齢期の人格
 33.6 高齢期の適応
34章 家族心理学
 34.1 家族システムの心理構造
 34.2 家族システムの心理過程
 34.3 家族システムへの心理的援助
35章 テスト理論
 35.1 古典的テスト理論
 35.2 項目反応理論
 
VIII 心の哲学
36章 意識
 36.1 意識のハードプロブレム
 36.2 思考可能性と事物的可能性
 36.3 知識論法
 36.4 クオリアの表象説
 36.5 感覚経験の志向性
 36.6 意識と言語
37章 身体論
 37.1 身体論を観察する
 37.2 身体と意味の生産
 37.3 慣習的行動の生産
 37.4 技能の根源としての身体
38章 人工知能
 38.1 人工知能とは何か
 38.2 人工知能の歴史
 38.3 人工知能にとって難しい問題
 38.4 最近の話題
39章 生態心理学
 39.1 ギブソン生態心理学の史的背景
 39.2 生態心理学の枠組み
40章 社会構成主義
 40.1 「ワンダフルライフ」
 40.2 「ワンダフルライフ」に見る社会構成主義
付 録

索 引
 事項索引 
 人名索引  
 英日用語対照表