『自由の正当性 古典的自由主義とリバタリアニズム』

「ミネルヴァ通信 2006-6」の「私の忘れ得ぬ一冊」より。

『自由の正当性 古典的自由主義リバタリアニズム』ノーマン・バリー著、足立幸男 監訳、木鐸社、一九九〇年
森村進一橋大学教授)

本書の原書は一九八六年に出たが、私は一九九〇年に出版された邦訳で読んで以来、何度となく本書を通読したり部分的に読み返したりして、尽きせぬ知見を得てきた。私はそれまでにノージックの『アナーキー・国家・ユートピア』を読んでリバタリアニズムにひきつけられていたが、本書によってリバタリアニズム古典的自由主義のいくつかのタイプの類似と相違がよくわかり、それまでのばらばらな知識を整理することもできた。

すぐれた学問的著作は、二つのタイプに大別することができる。当該領域に全く新たな問題や概念をもたらす革命的な著作と、既存の業績の手際よい概観を与えてくれる、ずっと地味だが有益さでは劣らない著作である。前者を生み出すのは独創的な発想であり、後者を生み出すのはバランスのとれた観点と緻密な孜々(しし)たる研究である。本書は後者の典型と言える。

二〇〇三年も終わり近くなって、本書で紹介されていたロスバードの『自由の倫理学』とデイヴィド・フリードマンの『自由のためのメカニズム』の邦訳を出せたことはうれしい限りだった。

自由の正当性―古典的自由主義とリバタリアニズム

自由の正当性―古典的自由主義とリバタリアニズム

自由の倫理学―リバタリアニズムの理論体系

自由の倫理学―リバタリアニズムの理論体系

自由のためのメカニズム―アナルコ・キャピタリズムへの道案内

自由のためのメカニズム―アナルコ・キャピタリズムへの道案内