『バートルビーと仲間たち』

バートルビーと仲間たち』エンリーケ・ビラ=マタス著、木村榮一・訳、新潮社 2008/02 ■ ソクラテスランボーサリンジャーボルヘス、ピンチョン……。あらゆる時代に現れる、全く書かなくなる作家たち。「バートルビー」書けない症候群に陥った作家たちの謎の時間を探り、書くことの秘密を見いだす、異色世界文学史小説。46判/ハードカバー/224頁 

バートルビーと仲間たち

バートルビーと仲間たち

バートルビー症候群および作文指導について http://homepage3.nifty.com/AIYKO19/batorubi.htm

 まず最初に、「バートルビー症候群」とは何かについて説明をしておこう。この言葉は、エンリーケ・ビラ=マタスの『バートルビーと仲間たち』という小説において使われているものである。この作品は、「新潮」2001年10月号に翻訳が掲載された。
 ビラ・マタスは、「バートルビー症候群」に罹患している人々を、「心の奥深いところで世界を否定している人間」であり、「この病におかされたために、何人もの作家が厳格な文学的意識を持っているにもかかわらず、(というか、おそらくはそれ故に)何も書けなくなってしまう」状態に陥っている、「否定的な衝動という病にかかった作家たち」であると定義している。そして、この病気こそは、「現代文学がかかっている病気、慢性的な悪弊、つまり一切を衝動的に否定したり、虚無に引きつけられる傾向」なのだと説明している。

バートルビー症候群」の最大の誘因は、書く習慣を身に付けていないということである。できるだけ早い時期に、書くことを習慣にしてしまうことだ。そのためには、書く喜びをしっかりと味わっておくことである。そして、書くことにともなう様々な「書けなくなる」要因を注意深く除去しておくことである。書かないこと、無為に陥ることが最大の病因だからである。