新しい「タ」の発見

「婉曲化による配慮のタ」というのもあるのですね。ふむふむ。

 バイト先で、客に「ありがとうございました」と挨拶したら、店長にこっぴどく叱られた、という類いの話をよく聞く。タを使ってしまうと、その時限りで、過去の関係となり、縁が切れてしまうから「ありがとうございます」と言え、ということのようである。
 いえ、このタは、過去ではなく婉曲化による配慮の表現です、などと授業で教わったとおりに、真っ向から反論して、居心地を悪くしてしまうような学生はいない(まあ、いたらいたで、かなり鬱陶しいだろうけれどネ)。不承不承、言い直しているらしい。
 タ=過去という思い込みが、語用論レベルにまで影響を与えているのである。

はんざわかんいち(2015)ことばのことばかり13 ありがタめいわく、日本語学 2015年4月号: 45