『センの正義論 効用と権利の間で』若松良樹(勁草書房)

from 試行空間(北田暁大さん) 2004-04-07

センの正義論―効用と権利の間で 本書は、ノーベル賞経済学者アマルティア・センの「政治思想/哲学」を、副題が示すように、「効用」主義と「権利」論との《あいだ》に位置づけ、その《あいだ性in-between-ness》のラディカルさをきわめて緻密に分節化した労作である。全体の議論を貫く問いの「骨」は、政治理論を、正義の女神が「見ないことにしている」情報、女神が排除した情報に着目することによって整序していく、というセン自身の方法論的意識(「本書は「ある主張の是非を判定するためのよい方法は、それが無視しているものを見定め、検討することである」というセンの主張を手がかりに、情報という観点からセンの正義論の全体像にアプローチしようとするものである(p2)」)。