日経サイエンス 2004年8月号

http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0408/dna_1.html

短期集中連載 がらくたDNAに注目せよ(1)
       偽遺伝子に意外な役割    広常真治

 ゲノムの中には「遺伝子の残骸」とか「遺伝子の化石」などと呼ばれるDNA配列がある。もとは遺伝子として働いていたのに,何らかの原因でタンパク質をつくる機能を失ってしまったもので「偽遺伝子(pseudogene)」といわれる。しかし,私たちはある偽遺伝子が重要な役割をもつことを発見した。これは従来の常識を覆すもので,発見した私たち自身驚いている。
 偽遺伝子ができあがった経緯を考えると,最初はまちがいなく「機能をなくした遺伝子の残骸」だったはずだ。面白いことに,哺乳類はショウジョウバエや線虫に比べて偽遺伝子の数が格段に多く,哺乳類の中でもヒトとマウスでは数に大きな違いがある。いわゆる“高等”な生物ほど偽遺伝子が多くなる傾向があるようなのだ。私たちの発見を紹介しながら,偽遺伝子をめぐる進化の不思議さをお伝えしたい。

よみがえるフロイト   M. ソームズ
フロイト再来の悪夢   J. A. ホブソン

フロイト精神分析学が神経科学の観点から見直されようとしている。フロイトが描いた心の理論には現代の脳研究の成果と重なる部分があるというのだ。しかし,これに対しては反論もある。