綿矢りさ『蹴りたい背中』

Tigerlily Scribble:http://d.hatena.ne.jp/Tigerlily/20050211

綿矢りさ蹴りたい背中』*1は、その私の知らない「中規模地方都市の若者ならではの行動」描写部分が秀逸だと思いました。ファッションビルに入ってる無印とかモデルのコンサートとか。これは私、10代だったら嫉妬すると思うなあ。まあいま30代でも嫉妬するけど……。いいなー若くて可愛くてタレンテッドで! 親不孝な娘でママごめんなさい! みたいな。
「高校生が回顧する中学時代」がいい。1、2年で自分の興味の対象も、周りからの扱われ方もまったく変わってしまうあの感じ。大人になると成長曲線が劇的な上昇はしない代わりに、「自分はこの程度」という予測がつくことによって今後の計画を立てることができて、心の安定を手に入れる。まあ現実の人生というものは何が起こるかわからないとはいえ、若者とは違う種類の不安が膨らむばかりとはいえ。かつて経験して、いまは変わってしまった「記憶と時間の遠近法」視座が思い起こされて、どろりと甘酸っぱいですね。

そうか。「中規模地方都市の若者ならではの行動」描写部分やら、「高校生が回顧する中学時代」やらのディテールはよかったかもなぁ。いま書いておかないと二度と書けない描写だろうし。
追記)少女マンガ的だったのがよかったのかも。絵柄は西炯子榎本ナリコあたりの感じで。