数学:物理を学び楽しむために[講義ノート]

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数学:物理を学び楽しむために田崎晴明
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5月3日 2005 年
今のところ、もっとも価値があるのは 10 章のベクトル解析のところだと思う。
とくに変わった話題はないけれど、ごまかさずに筋をきちんと通すために、ふつうの本には書いていないような内容もきちんとカバーしてある。 また、10.8.5 節のベクトルポテンシャルの議論は、すでにベクトル解析や電磁気学を学んだ人にもおもしろいかもしれない。 ふつうの本は、スカラーポテンシャルは線積分をつかって構成しているのに、ベクトルポテンシャルになったとたんに腰が引けて天下りにポテンシャルを定義している。 ここでは、面積分、線積分の考えから、自然にベクトルポテンシャルが定義できることを解説している。 また、最後の「ベクトルポテンシャルの物理的意味」も(実は学期末で力尽きて計算の詳細は問題にしてしまったのだけれど)有益かも(前野さんのベクトルポテンシャルとは何ぞや?(その1)とあわせて読むと、なおよい)。

目次
第1 章はじめに
1.1 物理で数学を使うことについて
1.2 物理と数学
1.3 いくつかの概念や記号

第2 章集合、数、関数
2.1 論理と集合
2.1.1 命題
2.1.2 命題のあつかい
2.1.3 集合の基本
2.1.4 集合の包含関係、和、交わり、差、積
2.2 数と数列
2.2.1 自然数と整数
2.2.2 有理数
2.2.3 有理数の数列と極限
2.2.4 実数
2.2.5 物理における実数
2.2.6 複素数
2.3 無限級数
2.3.1 無限級数と絶対収束
2.3.2 無限級数の例
2.3.3 複素数の無限級数
2.4 関数と連続性
2.4.1 写像
2.4.2 関数
2.4.3 関数の極限
2.4.4 関数の極限と連続性

第3 章関数と微分
3.1 微分法
3.1.1 微分への導入
3.1.2 一般の関数の微分
3.1.3 微分についての基本的なルール
3.2 様々な関数と微分
3.2.1 x^α の導関数
3.2.2 指数関数
3.2.3 指数関数についての定理の証明
3.2.4 対数関数
3.2.5 べき乗、指数、対数の大小の比較
3.2.6 三角関数と複素変数の指数関数
3.2.7 双曲線関数
3.3 高階の導関数テイラー展開
3.3.1 マクローリン級数とテイラー級数
3.3.2 無限級数としてのテイラー級数
3.4 偏微分
3.4.1 二変数関数と偏微分
3.4.2 多変数関数への拡張

第4 章微分方程式入門
4.1 微分方程式とその解
4.1.1 微分方程式とはなにか
4.1.2 微分方程式の解とはなにか
4.2 指数減衰の微分方程式とその変形
4.2.1 最初の例― 減衰の微分方程式
4.2.2 定数項をふくむ減衰の方程式
4.2.3 連立微分方程式の例
4.3 一次元での運動
4.3.1 力が時間のみに依存する状況
4.3.2 力が速度のみに依存する状況― 空気抵抗
4.3.3 単振動の方程式と複素数の指数関数
4.3.4 減衰振動の問題
4.3.5 強制振動の問題
4.4 微分方程式に関する用語や概念
4.4.1 微分方程式の分類
4.4.2 微分方程式の解

第5 章座標とベクトル
5.1 二次元空間の座標
5.1.1 デカルト座標極座標
5.1.2 点の移動
5.1.3 座標変換
5.2 三次元空間の座標
5.2.1 三次元空間のデカルト座標系
5.2.2 三次元空間の極座標
5.2.3 三次元空間での回転
5.2.4 三次元空間での座標変換
5.2.5 d 次元空間の座標と図形
5.3 三次元空間のベクトル
5.3.1 ベクトルの基本
5.3.2 ベクトルの内積
5.3.3 ベクトルの外積
5.3.4 ベクトルの線形独立性と基底ベクトル
5.3.5 ベクトルの成分表示
5.3.6 三つ以上のベクトルの積
5.3.7 座標変換とベクトル
5.4 三次元空間の中の運動
5.4.1 点粒子の運動、速度、加速度
5.4.2 回転と角速度

第6 章行列とベクトル
6.1 代数ベクトルの基本
6.1.1 d 次元のベクトルの定義と演算
6.1.2 ベクトルの線形独立性
6.1.3 ベクトルの内積と正規直交基底
6.2 行列の定義と基本
6.2.1 d 次元の正方行列
6.2.2 行列とベクトルの積
6.2.3 特別な行列
6.2.4 行列のトレース
6.3 ディターミナント
6.3.1 二次の正方行列のディターミナント
6.3.2 三次の正方行列のディターミナント
6.3.3 置換とそのパリティー
6.3.4 d 次の正方行列のディターミナント
6.3.5 ディターミナントの基本的な性質
6.3.6 ディターミナントの計算法
6.3.7 ベクトルの線形独立性の判定法
6.4 逆行列と連立一次方程式
6.4.1 2 次の正方行列の逆行列
6.4.2 一般の正方行列の逆行列
6.4.3 逆行列と連立一次方程式
6.5 行列の固有値固有ベクトル、対角化
6.5.1 行列の固有値特性方程式
6.5.2 固有ベクトルと行列の対角化
6.5.3 エルミート行列の対角化
6.5.4 実対称行列の対角化
6.5.5 ユニタリー行列、直交行列の対角化

第8 章常微分方程式の理論と解法
8.1 常微分方程式の解の存在と一意性
8.1.1 近似解の構成― 未知関数が一つの一階常微分方程式
8.1.2 解の存在と一意性― 未知関数が一つの一階常微分方程式
8.1.3 証明
8.1.4 連立の一階常微分方程式のあつかい
8.1.5 高階の常微分方程式のあつかい
8.2 簡単にとける一階の常微分方程式
8.2.1 積分だけで一般解が求まるタイプ
8.2.2 変数分離形の一階常微分方程式
8.2.3 変数分離形に帰着できる形、とくに同次形
8.2.4 線形一階常微分方程式と定数変化法
8.2.5 ベルヌーイの微分方程式
8.2.6 完全微分形の一階常微分方程式
8.3 一階の方程式になおせる(未知関数が一つの)二階の常微分方程式
8.3.1 二階微分と一階微分だけを含む形
8.3.2 時間を含まない形
8.4 線形常微分方程式の一般論
8.4.1 斉次の線形一階常微分方程式
8.4.2 非斉次の線形一階常微分方程式
8.4.3 非斉次の線形二階常微分方程式への応用
8.5 定数係数の線形常微分方程式
8.5.1 もっとも一般の定数係数の線形一階常微分方程式
8.5.2 未知関数が二つの方程式― 線形独立な固有ベクトルのある場合
8.5.3 線形独立な固有ベクトルがない場合
8.5.4 未知関数がn 個の方程式
8.5.5 定数係数の線形二階常微分方程式

第10 章場の量の微分積分
10.1 場とその表わし方
10.1.1 場とはなにか
10.1.2 場の数学的な表現と例
10.2 ベクトル場の線積分
10.2.1 線積分の定義― 力の場のする仕事
10.2.2 一般の線積分の定義と基本の性質
10.2.3 簡単な線積分の計算
10.2.4 一般の道についての線積分の計算法
10.3 スカラー場のグラディエント
10.3.1 スカラー場の微小変化とグラディエント
10.3.2 grad '(r) の線積分
10.3.3 ベクトル場がスカラー場のグラディエントで書けるための条件
10.4 ベクトル場のローテーション
10.4.1 基本的な考え方と計算
10.4.2 ローテーションの定義
10.4.3 rot grad = という恒等式
10.4.4 一般の閉じた道に沿った流れ
10.5 ベクトル場の面積分
10.5.1 面積分の定義
10.5.2 面積分の基本的な性質
10.5.3 面積分の例
10.6 ストークスの定理
10.6.1 ストークスの定理― 簡単な場合
10.6.2 ストークスの定理― 一般の場合
10.6.3 ストークスの定理の簡単な帰結
10.7 ダイバージェンスガウスの定理
10.7.1 ベクトル場のダイバージェンス
10.7.2 div rot = という恒等式
10.7.3 ガウスの定理― 簡単な場合
10.7.4 ガウスの定理― 一般の場合
10.7.5 再び、ダイバージェンスの定義について
10.7.6 逆二乗のベクトル場についてのガウスの法則
10.8 ラプラシアンとポテンシャル
10.8.1 スカラー場のラプラシアン
10.8.2 ラプラス方程式と調和関数
10.8.3 ラプラス方程式の解の一意性
10.8.4 ベクトル場のラプラシアン
10.8.5 ベクトルポテンシャル
10.9 まとめといくつかの便利な公式
10.9.1 場の積分のまとめ
10.9.2 場の微分のまとめ
10.9.3 積分定理
10.9.4 場の微分についての公式