『心が芽ばえるとき コミュニケーションの誕生と進化』(明和政子)

『心が芽ばえるとき コミュニケーションの誕生と進化』明和政子 著、NTT出版、2006/10 2415円 四六判 

  
霊長類から人類を読み解く なぜ「まね」をするのか

霊長類から人類を読み解く なぜ「まね」をするのか

from 滋賀県立大学 http://www.usp.ac.jp/japanese/news/n_20060702150720.html

人間文化学部明和政子講師が「日本霊長類学会高島賞」を受賞しました 05/07/27
 このたび、人間文化学部生活文化学科人間関係専攻の明和(みょうわ)政子講師が、2005年度日本霊長類学会高島賞を受賞しました。受賞対象論文は、下記の原著論文3件と和文著書1件で、受賞理由は下記のとおりです。
対象論文:
A) Myowa-Yamakoshi, M., Tomonaga, M., Tanaka, M. & Matsuzawa, T. (2003)
  Preference for human direct gaze in infant chimpanzees (Pan troglodytes).
  Cognition, 89, B53-B64.
B) Myowa-Yamakoshi, M., Tomonaga, M., Tanaka, M. & Matsuzawa, T. (2004) Imitation
  in neonatal chimpanzees (Pan troglodytes). Devlopmental Science, 7, 437-442.
C) Myowa-Yamakoshi, M., Yamaguchi, M., Tomonaga, M., Tanaka, M. & Matsuzawa, T.
  (2005, published online in December 2004) Development of face recognition in
  infant chimpanzees (Pan troglodytes). Cognitive Development, 20, 49-63.
D) 明和政子(2004) なぜ「まね」をするのか 河出書房新社, 172頁

受賞理由:
  明和氏の研究は、模倣とその発達を中心に、類人猿の社会的認知の性質を描き出すことを通じて、ヒトの独自性を浮き彫りにしようとしたものである。模倣にはさまざまなタイプのものが含まれており、刺激強調のように、試行錯誤を伴う個体学習と位置づけられるような単純なものは、多くのヒト以外の動物にも認められる。しかし、他者の動作をそのまま反復する、真の模倣、と呼ばれる行動は、チンパンジーでも難しいことを明和氏のこれまでの研究は実証的に明らかにしてきた。
 しかし興味深いことに、チンパンジー乳児には模倣の能力がそなわっている。対象論文B)は、この点を霊長類研究所で誕生した3個体を対象に明らかにしたものである。乳児に対面し、舌を出したり口を開けたりすると、ヒト新生児はそれを模倣する。これはヒト特有の能力だと考えられてきたが、テストした3個体はいずれもそれを模倣した。これまで1頭のチンパンジー乳児が同様の行動を示すことを明和氏自身がすでに明らかにしているが、本研究はこれをさらに確実な科学的事実へと発展させたものと評価される。従来の定説を覆し、ヒトの模倣能力の進化的基盤の一端を明らかにした研究として極めて重要である。......