『ことばと意味 : 言語の現象学』

『ことばと意味 : 言語の現象学』(岩波現代選書 54) J.M. エディ著、滝浦静雄 訳、岩波書店、1980
原書:Speaking and meaning, by James Edie

Speaking and Meaning: The Phenomenology of Language

Speaking and Meaning: The Phenomenology of Language

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《 2005年2月23日(水) 》

 J.M.エディ『ことばと意味』読了。原著は1976年。フッサールメルロー=ポンティの言語論を確認しながらも、さらに先をめざそうとする“言語の現象学”の試みです。

 第1章はフッサールの志向性の理論を概観した後、言語のもつ独特の理念性を確認します。僕の読んだ印象では正確かつ密度の高い内容で、非常に参考になると思います。
 第2章は『論研』第4研究および『論理学』に見られる“純粋論理学的文法”の提案をチョムスキー生成文法と比較します。本章によればこの両者は、表層の文法と区別される深層構造、あるいは“文法的なもの”の純粋構造を取り出そうとする点で共通であるとのこと。第4研究はおそらく『論研』のうちでも研究者たちにもっとも重視されていない部分だろうと思われるのですが、そこの価値を顕揚する議論はおもしろいと思います。

 第3章はメルロー=ポンティの言語論を論じます。ここも密度が高く、やや難しいところです。若干覚えとして。
・ 言葉は身体的行動や所作の一種でありその拡張である
・ 言葉の音とその内容との自然的な結びつき。語と意味の結合は規約的なものではなく、語は音の分化発展である
・ 知覚、直観的思考からの形式的志向の発展
ソシュールとの関係。統語論の軽視。メルロー=ポンティはフッサールの第4研究の意義を理解していない
・ 純粋な帰納の不可能性と本質直観

 第4章は「言語における意味のさまざまなレベル」を区別します。すなわち、(1)メルロー=ポンティがその重要性をはっきりと示した音韻体系のレベル、(2)語の意味のレベル、(3)普遍的深層構造を含んだ統語論のレベル、(4)“テクスト”のレベル、の4つです。意味論が統語論に包摂されえないということや、語と文の関係などについて、示唆的な議論が含まれています。
 第5章は隠喩的表現の根本的な重要性を示す議論です。この主張は認知言語学の主張と大きく重なるもので驚きました。現象学の延長線上(特にメルロー=ポンティから)に、こうした議論が位置づけられるということは非常に興味深いと思います。