『デジタル認知科学辞典』(CD-ROM付き)

日本認知科学会編 発行:日本認知科学会/発売:共立出版 本体価格12000円
▼書籍版の約3分の1という価格設定はよい。もっとも、書籍版が高すぎるだけなのではあるが。。。
http://www.kyoritsu-pub.co.jp/shinkan/shin0407_05.html

認知科学という学際領域での集大成である『認知科学辞典』(35000円)のデジタル版。
◆4000項目を超える膨大な用語をコンパクトな文字数でまとめた類まれな辞書。
◆数十に及ぶ認知科学の分野をとりまとめた大規模な辞典が検索可能。
◆関連語にもリンクがはってあるので容易に理解の幅を広げられる。
◆詳細設定検索をかけると全文検索が可能。
◆検索ソフトとして高速な検索が可能との評判の高いPDICを使用。
◆Adobe SVG Viewerを組み込めばWebブラウザで数式,図,表の表示が可能。

【関連リンク】「認知科学オントロジー」プロジェクト(PDF)

この「オントロジー」は知識工学の用語であり,概念体系を意味する.哲学で言うオントロジー存在論)─ すべての存在者が持つ一般的な性質を論ずる学 ─ とは異なる.他ならぬ「認知科学辞典」にも山口高平氏による「オントロジー」の項目があり,それによるとオントロジーとは「概念化の明示的仕様」である.
工学におけるオントロジーの研究は,オントロジーの構築法やオントロジーに基づく推論や複数の領域のオントロジーの間の対応付けにわたっており,その意味では,ここで言う「オントロジー」はむしろエピステモロジー(認識論)に近いのかも知れない.また,オントロジーは,古典的な人工知能の知識表現と形式的には同じものである.
しかし使われ方が違う.個々の人工エージェントが持つ知識の形式化としての古典的な知識表現とは異なり,オントロジーは,複数の人工エージェントの間で共有され,それを介して人間社会において共有され,こうして実社会における知的生産を支援するインフラとなる.これが「エピステモロジー」でなく「オントロジー」と呼ばれる所以とも言えよう.
認知科学オントロジー」プロジェクトの狙いもまさにそこにある.すなわち,「認知科学辞典」をオンライン化することにより,この辞典の単なる拡張・改良にとどまらず,認知科学および関連諸分野にわたる知の交換と共創をさらに活性化したい.
ただし,認知科学オントロジーは知識工学におけるオントロジーとはかなり異質のものとなるだろう.知識工学のオントロジーは機械のためのコンテンツだが,認知科学オントロジーは「認知科学辞典」と同様に飽くまでも人間のためのコンテンツだからである.「認知科学辞典」を拡張改良して認知科学オントロジーを構築する作業は,機械ではなく人間にとっての利便性を第一義的に追求する.そこでは,知識工学におけるオントロジーへの要請は,人間の利用者にとっての利便性に貢献する限りにおいてのみ意味を持つ.