一太郎・松下アイコン特許騒動

void GraphicWizardsLair( void ); // 2005年02月06日(日) [長年日記]
http://www.otsune.com/diary/2005/02/06.html

  • ネットでの「知財バトル」の論評で欠けているのは、知財バトルのコストは誰が払っているのか、という視点。これは、「法と経済学」的視点と呼んでもいい*1 *2
  • 知財バトルすべてが足の引っ張り合いというわけではないのは当然だが、「void GraphicWizardsLair( void ); //」でも触れているような「アメリカのパテント政策」の嵐が日本でも起きていいものなのかどうか。訴訟というものは直接的には財を生み出さない*3。直接的に財を生み出さない(そしてほかへ利益が伝播していかない)ビジネス活動が増えれば増えるほど、国全体の生産高(=GDP)は落ちていく。これは「訴訟の社会的コスト」の問題と呼べる。以前、『自動車の社会的費用』(宇沢弘文著、岩波新書)という新書がベストセラーになったが、この本の「知財バージョンが欲しいところである。もしかすると、すでにあるのかも。

追記栗原潔のテクノロジー時評ジャスト対松下:総括にはまだ早いけれど

私は、ソフトウェアを特許法で保護すること自体が問題というよりも、その運用が問題であると考えています。
今までのエントリーでも書いてますが、以下のようにするだけでも全然違うのではないかと思います。
1.進歩性の敷居を高くする
(特に、ユーザーインターフェースのように共通化することでより大きな価値が生まれるものは相当革新的なアイデアでなければ特許しない)
2.特許権を完全な独占排他権とするのではなく、必要に応じて特許を強制的に適切な料金でライセンスさせる仕組みを作る
(実は、これは現行特許法でも規定されている制度ですがほとんど活用されていないらしいです。)
3.ITの世界のスピードに合わせて保護期間を10年くらいにする
(これは、重要だと思いますが、現実的には条約の縛りがあるので難しいでしょうね)
4.特許権を悪用する企業に対して独占禁止法により特許権を剥奪する
(これも、規定はあるのですが活用されていないようです。)


いずれにせよ、ソフトウェア特許に対して反対する場合には、
 1.ソフトウェア特許という概念そのものがまずい
 2.ソフトウェア特許を現行の特許法で扱うことがまずい
 3.現行の特許法によるソフトウェア特許の運用がまずい
のいずれの立場なのかを明確にすることが必要でしょう。
(江島さんは1.、私は2.と3.の間くらいの立場でしょうか?)


#追加(05-02-10)
 4.現行のソフトウェア特許の運用は全体的にはまあOKだけど、この松下特許が無効にならないのはおかしい
という立場の人もいるかもしれませんね。


*1:あまり参考にならないですが、国会でも民主党がこんな質疑をしたそうです。
・知的財産制度における「法と経済学」的観点の重要性に関する質問主意書 http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a160010.htm

*2:関連書籍『法と経済学 企業関連法のミクロ経済学的考察』宍戸善一/常木淳 著(有斐閣
▼参考:id:editech:20041010#p1

*3:間接的に権利所有者である企業を介していくらかは生み出すということはあるが。