『行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由』

▼「個人の行動原理」を探るヒントとなる好著。

行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由』集英社新書  杉山 尚子 著 2005 ASIN:4087203077


失敗行動や犯罪の原因は、“心”に求められることが多い。「あいつはやる気がない」「過去のトラウマだ」等々。しかし、これでは評価にこそなりえても、問題解決にはつながらない。行動分析学は、ヒト及び動物の行動を「行動随伴性」という独自の概念によって明らかにするもので、行動の原因を個体内部、つまり心ではなく、個体を取り巻く外的環境に求めていく。アメリカの心理学者スキナーが創始した学問体系である。介護や医療、ビジネス、スポーツ、家庭などさまざまな現場で応用されており、大きな成果をあげてきた。本書は、日本における第一人者による、わが国初の一般用入門書である。

第1章 心理学をめぐる誤解(心とこころ;心理学にはいろいろある ほか)
第2章 行動の原理(好子出現の強化;嫌子消失の強化 ほか)
第3章 行動をどのように変えるか(新年の誓いはなぜ破られるか?;知識こそが行動の源なのか? ほか)
第4章 スキナーの思想と実験的行動分析(スキナーの哲学;はじめはネズミ、そしてハトへ ほか)
第5章 言語行動(人間の特徴は、言葉の使用である;スキナーの『言語行動』 ほか)


類書に、島宗 理氏の『パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学があります。

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学


行動分析学では、「嫌子」とか「好子」とか、独特の言葉が出てきますが、それぞれ「イヤなこと」「イイこと」と読み替えるといいでしょう。
『パフォーマンス・マネジメント』の46ページから引用します。

誰かが自分の行動をコントロールしようとすると、たいていの場合、嫌子として働く。コントロールしようとすると、反発の原理が働いて、逆らったり、反抗する行動が起こりやすくなる。相手が困ることが好子となるからだ。これをカウンターコントロールと呼んでいる。

※反発の原理=嫌子が登場したり、急に行動が消去(=否定されたり、忘れられたりすること)されると反発したり、相手を攻撃する行動が起こりやすくなる。


以前、コカコーラが新コークで味を変えて失敗したのは有名ですが、「コーク=アメリカなのだ。その味を変えるなんて、我々の愛国心を否定するのに等しい」みたいな反対運動は、まさしく反発の原理の好例だと言えるでしょう。

我々は "意識せずして" ある種の行動パターンをとってしまう。
そのことを教えてくれます。


【関連図書】行動分析学入門』杉山尚子、島宗理、佐藤方哉、リチャード・W・マロット、マリア・E・マロット著 産業図書 1998 ASIN:4782890303