『イギリス人の見たアメリカ文化365』

『イギリス人の見たアメリカ文化365』ピーター・トラッドギル著, 藤井基精 訳, 金星堂 ISBN:4764708752 1986
(原書:Coping with America : a beginner's guide to the USA / Peter Trudgill. Blackwell, 1982)

トラッドギルは、イギリスの社会言語学者。岩波新書『言語と社会』などの訳書がある。

 一般化するのは愚かしいことだが、アメリカの家庭の室内装飾はイギリスの家庭のとは違うものが多いようだ。調度品はイギリスのものより、ずっとぜい沢なものが多く、よりどぎつく飾り立てている。トイレにプラスチック製の花が置いてあることなど珍しいことではない。

 とくに郊外では、アメリカ人は素人が催すがらくた物セールが大好きのようだ。引越しで処分するがらくたがたくさんあるとき、金をほんの僅かばかりでもつくりたいとき、不要品処分のがらくた物セールを開く。このようなセールは、garage sale〔ガレージ・セール〕と言われているが、必ずしも自分の家のガレージで開くものとは限らない。
(以上、135ページ)

 アメリカ人はアメリカの国旗、国家に対するのと同じように、自分たちの所属する機関に非常にセンチメンタルな感情をいだいている。この態度は、学校、大学に対しても示されている。college も university も alumni〔同窓生〕にかなり強い関心を持っている。同窓生は alma mater〔母校〕と連絡を保ち、大学に寄付金を送るように強く勧誘されている。そして、大学には homecoming〔ホームカミング〕と称する年中行事さえある。この日に同窓生は大学に戻り、いろいろな行事に参加することになっている。 homecoming は大学レベル以外の学校でも真似されている。地域によっては、fathers day〔父の日〕、siblings weekend〔兄弟姉妹の日〕などという奇妙な学校行事も行われている。このような日には、スポーツ試合が行われることが多い。

 アメリカでは、大学だけでなく、ハイスクールでも graduate〔卒業〕する、中学校でさえ、graduate する、ということがある。小、中、高校でも大学でも同じように卒業を祝う式典を行う。この式には、上が平らな四角の卒業用の帽子、黒いガウン、卒業証書と、教職員、生徒によるスピーチなどがつきものとなっている。この卒業式は当然、学年の終わりに行われるのだが、妙なことに commencement〔“開始”の意〕と言われている。学生にとって、veledietorian〔卒業生総代〕、つまり卒業式で、告別のスピーチをする人に指名されることは、この上ない名誉である。これに選ばれる人は、普通、卒業学年で最も成績の良い人である(卒業式が、小学校、幼稚園でも行われているという噂があるが、本書ではそれを信じないことにしたい)。
(以上、153-154ページ)